(株)パトスロゴス代表取締役CEO 牧野 正幸氏 × (株)InfoDeliver監査役 桐原 保法

『ワークスアプリケーションズ創業者牧野正幸氏スペシャル対談』 Part1. なぜ、今DX人材不足と言われているのか?

公開日 2021年12月29日

株式会社パトスロゴス 代表取締役CEO 

牧野 正幸 (まきの まさゆき)

日本IBM契約コンサルタントを経て、1996年ワークスアプリケーションズを創業。COMPANYシリーズのグランドデザインを固め、日本初の大企業向けERPを開発販売。 数多くの上場、未上場の企業の経営アドバイスを行い、CEO退任以降は同様に経営アドバイザーとして活躍。2020年10月、日本におけるデジタルシフトの遅れを取り返すことを目的に株式会社パトスロゴスを創業。DXに寄与する自社製品の研究開発とサービスを提供すると共に、ベンチャー企業への経営支援、優秀なビジネスパーソンの輩出のサポートをしている。

株式会社InfoDeliver監査役

桐原 保法 (きりはら やすのり)

ソニーで長年人事分野に従事、人事制度の変革や人事の国際化を進め、80年代には日本語ワープロの導入、オフィスコンピュータの導入等、OA化のリーダーを務める。2003年COMPANY導入をきっかけに、牧野氏と知り合う。人事や総務・環境・生産戦略等の役員を歴任し、退任後、ソニー健康保険組合理事長、ソニー教育財団副理事長などを経て、(株)InfoDeliver監査役に就任、現在は、ビジネスマンのコーチとして20名ほどのコーチも務めている。

MC:本日は株式会社パトスロゴス代表取締役CEO牧野正幸氏、そしてInfoDeliver監査役 桐原保法さんを招いての対談をお送りいたします。DX時代に求められるスキルと現在のDX人材育成をテーマに話を広げていっていただけたらと思います。

MC:本日一つ目のテーマ『なぜ今日本はDX人材不足となっているのか』について、議論を深めていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

桐原:人材不足というのは、私はいまいちピンとこないんです。世の中はIT関係の技術の分からない人ばかりってわけじゃないし、問題はやっぱり、決める人がいないということが大元にあるような気がしていて…。やると決めたら、社内だけじゃなくて社外にもいる、いろいろと探せばいいと思うけれど、その辺りのスタンスがはっきりしなというのが人材不足というふうに言われている原因になっているのじゃないかと、素人ながら思っているんです。専門家としていかがでしょうか?

牧野氏:いくつかはあると思うのですけれども、今、DX人材が不足していると言われている理由というのは、私は大きく分けたら2つあると思っていて、その1つ目は、まずそもそもDXに必要な人というのはどういう人なのかという、アンマッチが起こっている。もう1つは、大きな流れの中で、DX人材ということにおいての定義づけの問題もあると思っていて、アンマッチということからいくと、そもそもDX人材というのは、本来どういう人なのかということなんです。DXとは、デジタルビジネストランスフォーメーションじゃないですか。でもデジタルの力、今の最先端のデジタル技術を使えばもっともっと会社のプロセスやいろいろなものを変えられる。ビジネストランスフォーメーションですから、会社のあり方も変えられるという大きな流れだと思うんです。ただ、これって昔から、20年前...1990年代から言われていた言い方でいうとBPRと同義なんですよね。

牧野氏:ビジネスプロセスリエンジニアリングの同異義語なので、率直に言うとDXでバズワードだと私は思うんですよ。ただそれは置いておいたとしても、デジタルの技術が世の中でずいぶん変わってきて、実はこれはIT企業にとっても相当な大きな変革になっています。IT企業であればあるほど。結局最先端のデジタルの技術というのに追従できているエンジニアの数は、おそらく全体の中の1割いないんだと思うんですよ。

桐原:なるほど。

牧野氏:これがまず一つあると思うんです。いわゆるIT人材全体に対して言えることは、この10年間で起こった革命に、ほとんどがついてこれていないっていうのが現実としてあると思います。もうひとつは、これも大きなポイントですけれども、そもそもデジタルトランスフォーメーションするときに、そういう技術というのは必要ではありますけれども、そもそもそれよりも業務のことが分かっていて、そして最先端のデジタル技術がわかっている人というのが、本来の企業内における一番必要な人材だと思うんですよね。ところがこれも2000年代より前の1910年代ぐらいからずいぶん流行ったのが、企業のIT部門は、特殊な部門なので非常に扱いづらいということもあった。会社によってはそのまま子会社化するのはよくある話ですけれど、もっと言ったら全部アウトソースだというふうに出してしまったケースもある。今はそのITのテクノロジーとどっちがどう使えるのかということがわかっているということが大事なんで、そこの部分は、やはり携わっていないと、どういう技術で何ができるのかというのがわからないので、深く掘り下げられる必要性はないと思うんですけれども、浅くてもどう使えるかということだけは理解している人が、ほぼ全員であるべきだと思うんですよ。

牧野氏:結局、経理担当者もわかっている、営業の若手の人もわかっているという状況の中で、ああだったら、こうしたらもっと便利になるんじゃないかとかというふうに、世の中を変えていく…そこのふたつがズレていて社内でのIT教育は、日本ではいい意味でも、悪い意味でも割とゼネラリスト型じゃないですか。海外の場合はスペシャリスト型ですけれども、その中でいうと少なくともIT人材という意味でいうとIT部門も、ローテーションの中に入れるべきタイミングなんだと思うんですよね。だから誰でも1年2年でもいいので経験していて、DXって今の新しい技術で何が出来るのか?みたいな。そうしたらこんなこともできるんじゃないか、あんなこともできるんじゃないかということを考えられる業務を分かっている人が、社内にものすごい数必要なんじゃないかな。こんなの外部に頼んでもできるものじゃないと私は思うんですよね。

桐原:なるほどね。まさに私個人を振り返っても、やっぱりずっと変革し続けてるんですよね。今、突然DXと言ったから、今変えなきゃいけないって言うんだけど、そうじゃなくてずっと変え続けていて、DXは今それこそバズワードと言っているけれど、それじゃあ終わったらそれで終わりかという話じゃないじゃないですか。たぶん”keep on changing”ってことで、変えていくんだっていう「意識」と「センス」の両方を持っていないといけないんだろうし、そういう人たちがもっともっと増えていくとが重要。それこそみんなでITのソフトウェアを作るわけじゃないから。

牧野氏:そうですね。

桐原:要はそこへの意識を持って変えていこうという視点と意欲があれば、なんとかできちゃうんじゃないかなというふうに気楽に思ったんですけどね。

牧野氏:そうですね。 だからDX人材が不足しているというのはもう一方の局面でいうと、さっき言ったようにIT企業におけるDX人材の不足というのは、DXではなくて、最先端テクノロジー人材の不足というのは間違いないと思います。これはなぜそういうことが起こってしまったかということを今紐解いてもしょうがないんですが、一応軽く紐解くとですね、もともとコンピューターにしろ何にしろ、確実にいつもエンタープライズの世界が先に流行って、簡略版かどちらがパーソナルユースに持ってこられるというのは、これはもうずっと長い歴史でそうじゃないですか。まずはプロユース。ソニーのカメラもそうじゃないですか。プロユースから出てそれを今度パーソナルの方に持っていくというのは、技術が発展していく中でそうなる。今回のコンピューターも例に漏れずソフトウェアも含めてずっと2千人前後ぐらいまでは、エンタープライズ向けのソフトウェアが圧倒的だったんですよね。

桐原:私もうずっとそれを思っていて、なんでそういう一種のメンテナンスというか、バージョンアップというか、そればっかりやるのがITのエンジニアなのか不思議でしょうがなかったんですよね。そこにカンパニーが出たりして、いろいろな新しいものがでて、どんどん変わっていくんだという、それがすごく実感できたのがあの時代だったそう思うんですよね。

牧野氏:だからエンタープライズがいわゆる基礎的なITの技術において、絶えずリードしていたんです。それこそIBMであり日立であり富士通やNECであり、いろいろな会社がリードをしていた。ところが、今回の技術革新というのは、いわゆるコンシューマベースユースのものがベースに先に出てきちゃったんですよ。これは今までとまったく流れが違っていて、簡単にいうとIBMの技術、富士通の技術というのも分かっていることが大事だったのが、あるタイミングから、そのIT業界と何の関係もない、いわゆる日本でいうITサービス業とまったく携わっていない。例えばGoogleだとかフェイスブックだとかNetflixだとかそういう会社の技術がオープンになって世の中に出てきちゃったんですね。 最初それは大した技術じゃなかったんですけれども、利用者の数が圧倒的に多いということもあって、どんどん猛烈な勢いで進化してしまって、今のいわゆるビッグデータだとか、クラウドベースという時代になると彼らが主役になってしまったんですね。 技術も彼らの技術でオープン化されたものが主役になってしまったんで、すなわち我々ITベンダーにとってみたら、正常進化だと思っていた技術の進化とまったく違うところで、急激に出てきたのが今の最先端テクノロジーなんですよ。

桐原:そうでしょうね。なるほど

牧野氏:そうすると逆に言うと、今まで企業内でITをやっていた方、ITサービス業の人材の大半が、えっ何これ?みたいなこの10年ですよね。今まで全然感じなかった世界なのに、これが主なテクノロジーになっちゃったみたいな。実際、笑えない話ですけど、私が前職のときに最後これじゃいけないともう思った一番大きなきっかけが一個ありましてね。COMPANYという製品は提供していたわけですけれども、そのときに私はIRで(投資家)を回っていたんですよ。その時、投資家から御社の研究開発は年々下がっていますが、これはなぜですかって聞かれたんです。下がっているわけないんだけど…というのがあって具体的な数字を見るために、私そこからPCで自社の運用していたCOMPANYにログインして、年度別の研究開発費の平均グラフを出すのに、(PCで)カチャカチャやっていたんですね。話しながらやっていたら5分ぐらいかかっちゃったんですけど、やっと出てくるかなと思ったときに、もう先に隣にいたIRの担当者が「これですね、下がっていませんね。」と。「それどこから出たの?」と言ったら「Googleで検索しました」と。いやいやいやいやそっちから確かに開示情報ではあるので、Googleで検索して一発で出てくるものが、なんでこの専門のシステムでこんな時間かかってんだって、実はそれにすごく驚いたんですよ。もう圧倒的にテクノロジーの方が進化してしまっているという。もうエンタープライズのシステムというのは、もうかなり進化の流れからいったらまったく逆方向を向いちゃったんだなということもあって、それが今の最先端テクノロジーでそれをもとにいろいろな人がいわゆるデジタルトランスフォーメーションなども時代は変わったんだと。AFAMが出てきた時代からもうすべての仕組みは変わっていくんだということで、デジタルトランスフォーメーションというのが流行り始めているというのはたぶん今の状態だと思うんですね。

桐原:まさに一種の異なる世界からやる、革命分子が飛び込んでくる、そんなイメージですよね。

牧野氏:そうです。それがたまたま今回はデジタルだったんで、それが大きなバズワードになったんでしょうね。

桐原:それは逆に言うと、いわゆるそれこそがまさにデジタルでも、オーソドックスデジタルがイレギュラーなデジタルにやられたとそんなイメージですよね。だからずっと進めていくとどっかに限界が出てくる、だから違う視点が大事なんだとそんなことなんでしょうねきっと。

牧野氏:そうです。だから結局エンタープライズのシステムの行き着く先というのはもう限界に来ていたということだと思うんですよ。で、多くの今世の中で普及している製品もそうですけど、旧来のデジタル技術を使って作られたものなので、それと最先端のデジタル技術だと発想の着眼点が違っているので、利便性だとか使い勝手という概念も違いますし、もっと言ったらそれを使ったらここまでできるんだということが、いろんな各所で起こってしまったんですね。今それこそ古巣のソニーさんもそうですけれど、今回Xperiaのスマホも国内のスマートフォンだとAndroidで1位になりましたよね。なぜあんなに売れたかというと、もうあれは世の中のネット上で言われているのは、デジタルカメラにいわゆるメールとかの機能が付いただけだという言い方で、世の中で求められているのは、小さな専用のデジカメじゃなくてネットに接続できる、デジタルカメラなんだっていうこと。久しぶりにソニーさん1位になったなと思うんですが、この間見ていてああいうところも着眼点の違いが出てきていてと思うんですよ。

桐原:それこそ今もうほんとスマホがないと決済も何もかも。

牧野氏:できないですからね。

桐原:逆に言うとこれがあるから便利という状態になったじゃないですか。この間までお金は別ということだったのが。でもきっと今度はまたいずれ、スマホに代わる何か媒体がきっと生まれていくんでしょうね。

牧野氏:だと思います。それはまた必ずスマホも行き着く先は必ず最終的にはもうこれ以上シーンができないというとこまでいってしまうので、今そのデジタルのせいで、それの時間軸が短くなっていっているんですよね。旧来のいわゆる機械系のものからデジタルに変わったことによって進化の速度が速いから、行き詰まるスピードも速くなっていますよね。

桐原:本当にスピードが速くなりましたね。

牧野氏:速くなりましたね。

桐原:以前だったら本当に基礎開発からいわゆる製品にするまでなんだかんだで10年20年30年でかかりましたけれど、それが本当に短くなって。

牧野氏:もう今1年2年ですよね。私はシリコンバレーに友人が結構いるのでいろいろ話していて、もう何年前ですかね。もうすでに7、8年以上前からこう言われていたんですね。Googleはもうすでにシリコンバレーの中ではもうGoogleにいったらダメだ、テクノロジーに古いというふうにも言われ始めているんですね。それが僕はすごくびっくりして、Google当時はまさに最先端もいいところだったのが、いやもう実はそうじゃないんだ、もっともっと優れたベンチャーが出てきているんだみたいな。その革命の波にあれだけ大きな会社はもう乗れないんだというのを聞いて、それはちょっとびっくりですなという感じだったんです。もちろん今のGoogleはまだまだシェア としてはダントツですし、まだまだ新しいものが出ていますけれど、確かに今出ている新しい商品って、もう少し前に開発されたものをより洗練させて出てきているというのが現実で、もっともっと確かに新しいテクノロジーものではポロポロポロポロ出てきているんですよね。

桐原:そうですよね。あんだけ大きくなるとやっぱり、とんがった商品を作れなくなるっていう面がありますよね。いろいろなお客さんがいるから、ある部分だけ特化したようなものはなかなか出しにくくなりますからね。

牧野氏:なのでDX人材ということだけにフォーカスして話をすると、時間とともに最先端デジタルの技術というのは当たり前ですが、使う人はすでにずいぶん増えてきているので、実際多くの人が使ったことはあるんですよ。実際スマホがまさにそうですから。これをもっとより深く理解これはなぜこういうことができているのか理解できるということが大事なので、使いながらいろいろなことを理解していって最先端のテクノロジーを理解するということがまず必要なんですけれども、IT系の残念ながら、ITサービス系の会社というのはがらんと残念ながら変えるしかないんです。
要は簡単にいうと、旧来からいる人で変革が難しい人というのはいっぱいいるんですよ。でこの人たちはただ今の現在じゃ明日からすべてのシステムが最先端になるわけじゃないので、ここはもうメンテナンスをやってもらうしかないと思うんです。それでメンテナンスをその人たちがやりながら、新しいテクノロジーは若い人たちでガンガン移っていくということが大事。

桐原:ですね。本当に若い人たちがやっぱり新しい世界を切り開くことは確かですからね。

牧野氏:そうですね。ITサービス業はそれがいいと思います。それしかないと思います。でまぁ、残念ながら私はITサービス業側の人間だったのでわかりますけど、ITサービス業にとってみればDXはまったくの商売のネタワードなんですよ。それはあまりいいことじゃ僕はないと思っていて、正しく言うと、IT業界自体がDXだったら無くなるタイプの業界なんですよね。結局エンタープライズのシステムをひたすらゼロベースで作って、メンテナンスをひたすらしてということに人材を大量投入するというのは、これがもう明らかにデジタル時代になったらなくなる仕事の1個なんですよ。だからむしろここは新しいテクノロジーを学べる人材の数を増やしていって、ビジネスの形態を変えていかないといけないと思います。一方、ユーザー側の方ですけれども、IT部門というのは特殊な部門じゃないんだということを認識して、今まで一流企業であっても日本の場合ローテーションしているじゃないですか。ローテーションやめるという方法ももちろんあると思いますけど、やめるとしても少なくともITの技術とか知識というのは、簡単に言ったら軽い経理の知識ぐらいですよね。同じようにそれぐらいと同じで常識的に全員身につけないといけないものなのでということと、あとはこれは実は統計が出ているのですけれども、日本はITサービス業が世界一多い国なんですよ。

桐原:あーそうですか。

牧野氏:そうなんですよ。むちゃくちゃ多い。ITサービスというのはいわゆるSaaSサービスということじゃなくて、ITの受託開発をしているシステムインテグレーションの会社ですよね。これが日本は世界で一番多くて、しかもそこの比率もめちゃくちゃ大きいんです。アメリカはだいたいITサービス業の人材と企業内のIT部門の人材でいうと1対3で企業内のが多いんですね。日本は逆、1対3でITサービス業の方が多いんです。すなわちアメリカと日本だと、9倍差があるということなんですね。これが実は日本が今のデジタル革命から遅れているもう1個の理由なんです。要は外部に任せていたらできるはずがないということなんですね。今後IT部門というのは、企業の経営部門のまさに一番右腕になるべき部門の一つ、そこに優秀な人材を投入して、その人たちが主導でマネージメントをやっていくようになれば、世の中ってその企業も変わっていくんじゃないかなというふうに。

桐原:そうですねやっぱりそれこそ経営者の視点というのをちょっと切り替えなければいけない。ちょっとじゃなくて、大幅に決めなきゃいけない。

牧野氏:と思いますね。

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