近年、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、業務効率化や競争力向上を目指してITシステムの導入や刷新を進めています。
特に給与計算のようなお金に関わる業務では、システムの効率性や操作性が低いとミスが発生するリスクが高まります。 こうした背景から、従来のオンプレミス型システムや旧式のソフトウェアから、マネーフォワードクラウド給与のようなクラウド型ツールへ乗り換える企業が増えています。
本記事では、他社製の給与計算ソフトやシステムからマネーフォワードクラウド給与への移行を検討されている企業担当者様に向けて、具体的な移行の手順、関連する費用、そして移行をスムーズに進めるための注意点について、提供された資料を基に詳しく解説します。
ぜひ、参考にしてください。
目次
移行できる主なソフト・システム
マネーフォワードクラウド給与は、CSVファイルの取り込みやAPI連携といった機能を備えているため、原理的には多くの既存システムからのデータ移行が可能です。
一般的なケースとして、以下のようなシステムからの移行が考えられます。
他社製給与計算ソフト(クラウド型・インストール型)
現在利用中の給与計算ソフトがCSVファイルでのデータ出力機能を持っていれば、そのデータを取り込む形で移行を進められます。
また、マネーフォワードクラウド給与は、他社製のクラウド型勤怠管理ソフトともAPI連携が可能です。 そのため、給与計算部分のみをマネーフォワードに切り替えるといった柔軟な導入も検討できます。
自社開発のオンプレミスシステム
長年運用してきた独自のオンプレミスシステム(自社サーバーで運用するシステム)からの移行も考えられます。
この場合、既存システムから必要なデータをCSV形式などでエクスポートできるかどうかが一つのポイントになります。
データの抽出や整形に手間がかかる場合もありますが、クラウド化によるメリット(運用コスト削減、テレワーク対応など)を考慮して移行が検討されます。
SAPなどの大規模ERPシステム
大企業で利用されるSAPのような統合基幹業務システム(ERP)の一部として給与計算機能を利用している場合でも、給与計算部分をマネーフォワードクラウド給与に切り出す、あるいは連携させるといった構成が考えられます。
API連携などを活用し、必要なデータのみを連携させることで、業務効率化を図るケースもあります。 さらに、マネーフォワードは給与計算単体だけでなく、会計、人事管理、勤怠管理、経費精算、債権債務管理、契約管理など、バックオフィス業務全般をカバーする「マネーフォワードクラウドERP」も提供しています 。
そのため、SAPのような大規模ERPから、これらの業務領域も含めてマネーフォワードクラウドERPへ全面的に乗り換えるという選択肢も存在します。
これにより、システム間の連携がよりシームレスになり、データの一元管理を通じた経営の可視化や、さらなる業務プロセスの最適化、DX推進が期待できるでしょう。
マネーフォワード移行の方法|ステップ別に解説
給与計算ソフトをマネーフォワードクラウド給与に移行する際の一般的なステップは以下の通りです。 ただし、これは導入するソフトの種類や従業員規模、移行するデータ量によって変動します。
ステップ1:製品選定と比較検討
まず、自社の課題やニーズを明確にし、それに合致する給与計算ソフトとしてマネーフォワードクラウド給与が最適か、他の選択肢とも比較しながら検討します。デモを依頼して操作性を確認することも重要です。
ステップ2:システム化計画の策定
マネーフォワードクラウド給与をいつから本格的に使い始めるか、旧システムからどの範囲のデータを(例:過去何年分の給与データなど)、いつまでに移行するかといった具体的な計画を立てます。
ステップ3:要件定義・基本設計・詳細設計
マネーフォワードクラウド給与の標準機能や制約条件を理解した上で、自社の給与規定や業務フローをどのように新システムに適合させるか、詳細な設定項目や運用ルールを詰めていきます。
例えば、独自の手当がある場合、それが標準機能で対応できるか、代替案が必要かなどを検討しましょう。
ステップ4:システム設定・データ移行
決定した要件に基づき、マネーフォワードクラウド給与上で手当区分、従業員区分などの各種設定を行います。 並行して、旧システムから従業員のマスターデータや、必要に応じて過去の給与計算データを新システムへ移行します。
ステップ5:検証・並行稼働・運用開始
設定とデータ移行が完了したら、テストデータや実際のデータ少量で計算結果が正しいかなどを検証します。
その後、一定期間、旧システムとマネーフォワードクラウド給与を並行して稼働させ、計算結果に差異がないかなどを確認します。 問題がなければ、旧システムを停止し、マネーフォワードクラウド給与での本格運用を開始します。
移行にかかる費用|無料・有料オプションの違い
マネーフォワード クラウドへの移行は基本的に無料ですが、無料版には仕訳登録数やデータ閲覧期間の制限があります。事業規模や利用頻度に合わせて有料プランを検討しましょう。
マネーフォワードクラウドの有料プランは下記の通りです。
プラン | スモールビジネスプラン | ビジネスプラン |
---|---|---|
利用人数目安 | 3名以下 | 4名以上 |
料金(年額払い) | 2,980円/月 (年間35,760円) | 4,980円/月 (年間59,760円) |
料金(月額払い) | 3,980円/月 | 5,980円/月 |
特徴 | 部門管理不要な小規模事業者向け | バックオフィス業務全般を効率化したい中小企業向け |
無料トライアル |
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また、オンライン相談も実施しており、利用者の状況や要望に合わせた最適なプランを提案してくれます。1ヶ月間の無料トライアル期間も設けているため、気になった方は無料プランで登録してみることをおすすめします。
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移行に必要な期間・工数はどれくらい?
マネーフォワードクラウドへの移行期間は、導入するソフトの種類や従業員規模、データ量によって大きく変動しますが、一般的に6~8ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。
期間を左右する主な要因には、下記が挙げられます。
- 導入ソフトの種類:給与計算ソフトなど、機能の複雑さで期間が変わります。
- 従業員規模:従業員数が多いほど、データ移行や設定に時間がかかります。
- データ量:過去データの移行範囲が広いほど、移行作業に時間を要します。
マネーフォワードクラウドへの移行に必要な期間は以下のとおりです。
項目 | 期間 | 内容 |
---|---|---|
製品選定 | 1ヶ月目 | 自社に最適なソフトを比較検討 |
システム化計画・要件定義 | 2-3ヶ月目 |
新ソフトでの業務開始時期決定
移行データ範囲の決定 要件定義 |
設計・システム設定 | 4-5ヶ月目 |
ソフトの設定
従業員区分など詳細な設定 |
データ移行・検証 | 6-7ヶ月目 |
従業員・給与計算データの移行
並行稼働で検証 |
運用開始 | 8ヶ月目以降 | 本稼働の開始 |
引用元:マネーフォワードクラウド「給与計算ソフトの導入スケジュールと知っておきたい3つのポイント」
これらの期間はあくまで目安です。複雑な手当設定が多い、多数の拠点がある、古いシステムからのデータ移行が難航するなどの場合は、さらに時間が必要になることもあります。
工数については、情報システム部門だけでなく、人事・労務担当者の作業も発生します。 特に、要件定義の段階での業務担当者へのヒアリングや、データ移行時の確認作業、新システムの操作習熟などには、相応の時間と労力が必要となることを考慮しておく必要があるでしょう。
移行を検討する際は、余裕を持ったスケジュールで進め、移行前に必要な準備や手順を確認してください。
移行時に注意すべき5つのポイント
マネーフォワードクラウド給与への移行をスムーズに進め、導入後に「思っていたのと違う」といったギャップを防ぐためには、事前の準備と確認が不可欠です。 以下に、特に注意すべき5つのポイントを解説します。
1. データ形式の確認
旧システムからマネーフォワードクラウド給与へデータを移行する際、データの互換性は非常に重要です。特にCSVファイルなどでデータを取り込む場合、文字コード(Shift-JIS、UTF-8など)や日付の形式(YYYY/MM/DD、YYYY-MM-DDなど)、数値の桁区切りなどが新旧システムで異なっていると、文字化けやエラーの原因となり、正しくデータが移行できません。事前にマネーフォワードクラウド給与が対応しているデータ形式を正確に把握し、旧システムからの出力データをそれに合わせて調整(データクレンジングやフォーマット変換)する必要があります。 どの項目が必須で、どの項目が任意かなども確認しておきましょう。
2. 過去データの扱い
過去の給与計算データをどこまで新システムに移行するかは、慎重に検討すべき点です。 法的に保存が義務付けられている期間のデータはもちろん考慮に入れる必要がありますが、全ての過去データを移行することが必ずしも最善とは限りません。データ量が多すぎると移行作業に時間がかかったり、新システムのパフォーマンスに影響したりする可能性も考えられます。システム化計画の段階で、業務上必要な参照範囲や法的要件を考慮し、移行するデータの範囲と期間を明確に決定することが大切です。 場合によっては、一定期間のデータのみを新システムに移行し、それ以前のデータは旧システムや別途アーカイブとして保管するといった運用も検討しましょう。
3. 社内教育の有無
新しいシステムの導入には、利用者である従業員や人事・労務担当者への教育が不可欠です。 マネーフォワードクラウド給与の操作方法が直感的で分かりやすいとしても、これまでの業務フローからの変更点や新しい機能については、事前に説明やトレーニングの機会を設けることが望ましいです。 特に給与明細のWeb閲覧方法や、年末調整機能など、一般従業員が直接利用する機能については、十分な周知と教育を行うことで、問い合わせの削減やスムーズな利用促進に繋がります。 マニュアルの整備や、必要に応じて研修会などを計画しましょう。
4. 権限設定・クラウドセキュリティ
クラウドサービスを利用する上で、セキュリティ対策は非常に重要です。マネーフォワードクラウド給与に移行する際には、誰がどの情報にアクセスでき、どのような操作を行えるのかを細かく設定できる権限管理機能の確認と適切な設定が求められます。
従業員の個人情報や給与といった機密情報を扱うため、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策は万全でなければなりません。マネーフォワードクラウドが提供するセキュリティ機能(データの暗号化、アクセスログ管理、二要素認証など)を理解し、自社のセキュリティポリシーに沿った運用体制を構築することが重要です。
5. システム停止時間・並行稼働の有無
給与計算業務は、毎月決まった時期に正確に行う必要があるため、システム移行に伴う業務停止時間は極力短く抑えたいところです。
移行スケジュールを計画する際には、いつ旧システムから新システムへ切り替えるのか、その際に業務が停止する期間はどれくらいか、給与支払日に影響は出ないかなどを慎重に検討する必要があります。
また、新システムへの完全移行前に、一定期間、旧システムとマネーフォワードクラウド給与を並行して稼働させ、計算結果に矛盾がないかを確認する「並行稼働」の期間を設けることが強く推奨されます。
これにより、万が一新システムに問題があった場合でも、旧システムで対応できるため、リスクを低減できます。
マネーフォワード移行を成功させるコツとプロの支援活用
マネーフォワードクラウド給与への移行を成功させるためには、いくつかの重要なコツがあります。まず、乗り換え前に自社の現状の課題を徹底的に洗い出すことです。
多角的な視点から、下記の問題点を明確にすることで、新システムに求めるものが具体的になります。
- 操作性
- レポート機能
- データ入力の手間
- システムの安定性や拡張性
- 法改正への対応状況
- サポート体制
- コスト
これらの準備を自社だけで行うのが難しい場合や、より確実かつスムーズな移行を目指す場合には、プロの支援を活用することも有効な手段です。
マネーフォワード自身も有償の導入サポートを提供しています。 こうした専門家のサポートを受けることで移行プロジェクトの負担軽減と成功確率の向上に繋がるでしょう。
さらに、外部のプロに移行を依頼するのもおすすめです。COMIT HRは、お客様の課題や要望に合わせて、最適なシステム移行を支援します。提携システムから企業に合ったシステムや、既存システムとの組み合わせプランを提案します。
システムで対応できない機能については代替案を提示します。設定要件を伝えるだけで、システム移行はすべて任せることができます。
多数の導入実績とノウハウを基に、短期間かつ低コストで従来の給与計算ソフトからマネーフォワードクラウドへの移行を実現してくれるでしょう。
まとめ
給与計算ソフトをマネーフォワードクラウド給与へ移行することは、業務効率化やコスト削減、法改正へのスムーズな対応など、多くのメリットをもたらす可能性があります。
しかし、その移行プロセスには、現状の課題分析や要望の整理、自社業務特性の明確化、そして慎重なシステム選定と導入計画が不可欠です。
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