公開日:2024年3月8日 
日本市場への進出は、外資系企業にとって大きなチャンスであると同時に、給与計算という大きな壁に直面する可能性があります。日本の労働法や社会保険制度は複雑で、頻繁な改正が行われます。さらに、外国人従業員への対応や、英語でのコミュニケーションも必要です。
課題を克服するためには、専門知識と多言語対応能力を備えた人材が必要となり、企業にとって大きな負担となるでしょう。
給与計算をアウトソーシングすることで、課題を解決し、グローバル展開を加速させることが可能です。専門知識を持つアウトソーシングパートナーは、複雑な法令への対応、多言語でのコミュニケーション、最新のシステム導入などを提供し、企業の負担を軽減します。
この記事では、日本市場への進出を目指す外資系企業の方に向けて、給与計算における課題と、解決策としてのアウトソーシングの価値を解説しています。ぜひ参考にしてください。
目次
外資系企業の給与計算における特有の課題
外資系企業における給与計算プロセスでは特有の課題を抱えていることが現状です。
言語と文化の違い
外資系企業の日本拠点は管理部門の不在が一般的です。給与計算に関する情報は海外の本社が管理しているため、言語や文化の違いによるコミュニケーションの壁が生じやすい課題があります。
外資系企業の日本拠点は英語圏とのコミュニケーションが必要な場合が一般的です。また、日本と海外の文化や業務慣行の相違から、円滑なコミュニケーションが難しい場合があります。
言語と文化の違いは、情報の誤解や不足につながるため、給与計算の正確性に影響を与える可能性があります。
たとえば、用語の誤訳が給与計算の誤りやトラブルにつながるリスクが考えられます。文化や慣習への配慮不足が、従業員の不満やモチベーション低下につながる可能性もあります。
日本特有の労働法規と社会保険制度
日本の労働法や社会保険制度は複雑です。国際税務の複雑性なども加わるため、外国企業にとって理解が難しい要素が多く含まれています。
日本の労働契約や雇用形態に関する法規制は独自の特徴を持ち、給与計算では、適切に把握しなければなりません。ただし、日本の労働法規や社会保険制度は、頻繁に改正されるため、最新情報の把握が難しい特徴があります。
法改正への対応が遅れた場合、労務違反や過払金が発生する可能性が高くなります。
社会保険料や労働時間などの法定基準も異なるため、正確な給与計算を行うには詳細な理解が必要でしょう。
法令や制度の理解不足が、労務違反や多額の追徴金支払いなどのリスクにつながる可能性があるため注意が必要です。
国際税務の複雑性
外資系企業の給与計算には、国際税務の複雑性が付随します。異なる国の税制や法規制を考慮する必要があり、国際的な要素が絡む場合はさらに複雑になります。
外資系企業の給与計算における「国際税務の複雑性」には下記のリスクが挙げられます。
1. 多重課税のリスク
従業員が複数の国で所得を得ている場合、多重課税のリスクが発生します。多重課税は、従業員の負担増や企業の税務コスト増加につながります。
2. 各国の税制の違い
税制は、国毎により課税対象や税率、申告手続きなどが大きく異なります。各国の税制への理解不足が、納税ミスやペナルティの支払いなどにつながるため注意が必要です。
3. 外国人従業員への対応
外国人従業員に対しては、居住国や勤務国との租税条約に基づいて、適切な課税区分や控除の適用を行う必要があります。
- 複雑な申告手続き
国際税務に関する申告手続きは、各国の税務当局への書類提出など、複雑で煩雑な作業が必要です。申告手続きの誤りが、納税ミスやペナルティの支払いなどにつながるケースがあります。
外資系企業が安心して日本市場に参入し、ビジネスを展開するためには、信頼できるパートナーとの協力が不可欠といえるでしょう。
人事・給与システムの移行や給与アウトソーシングをご検討されている方のために、
COMIT HRのサービス概要と導入事例を解説しています。
給与計算アウトソーシングのメリット
外資系企業にとって、給与計算をアウトソーシングすることは、コンプライアンスの確保、経営リソースの効率的な活用、柔軟かつ迅速な対応力という3つのメリットをもたらします。
専門知識によるコンプライアンスの確保
専門家によるサポートを受けることで、給与計算プロセスは法令順守を確実に守られ、法的リスクを最小限に抑えられます。
給与計算アウトソーシングを活用することで、外国人従業員向けの給与計算業務を効率化し、グローバル展開に伴う給与計算業務の増加にも対応可能です。
公認会計士や税理士などの専門家が業務をサポートするため、労務違反のリスクを回避し、多額の追徴金支払いなどの問題を防ぐことができます。
経営リソースの効率的な活用
給与計算を外部に委託することで、経営リソースを効率的に活用できます。外部専門家のサポートにより、企業は内部の人材や時間を他の戦略的な業務に集中させることができます。
人事部門の負担を軽減し、企業が人材戦略に集中でき、経営効率化と業務の円滑化を実現します。給与計算アウトソーシングの活用は、経営の効率化と業務の円滑化をもたらします。
柔軟かつ迅速な対応力
アウトソーシングパートナーは柔軟かつ迅速な対応力を持ちます。外部専門家のチームは、状況に応じて迅速に対応し、必要な改善提案や課題解決策を提供します。
外資系企業給与計算アウトソーシングの企業では、バイリンガルのスタッフが英語での対応を行うため、外国人従業員にも理解しやすいサービスが提供可能です。
複雑な法令改正や社会保険制度変更への対応を迅速に行うことで、変化に柔軟に対応し、グローバルな競争力を強化できるでしょう。
COMIT HRによる、外資系自動車部品メーカー様への給与計算アウトソーシング導入事例を紹介します。
クライアント情報
| 業種 | 外資系自動車部品メーカー |
| 従業員数 | 800名 |
概要
本事例は、外資系自動車部品メーカーA社の給与計算アウトソーシング導入における成功事例です。A社は、事業拡大に伴い、人事給与システムの刷新と業務効率化を検討していました。
課題
- 従来のシステムは複雑で法改正対応にコストがかかる
- 人事給与業務の負担を軽減したい
- ペーパーレス化による業務効率化をしたい
解決策
- COMITHRのジョブカンへの移行とフルアウトソーシング
移行内容
| 給与計算システム | SAPからジョブカンへ |
| フルアウトソーシング | 人事・給与・ワークフロー・勤怠システムを一元化 |
| ペーパーレス化 | 紙申請、源泉帳票の電子化 |
| 賞与計算も完全システム化 |
移行方法
| 現状分析 | SAP設定内容と実際の運用状況を分析 |
| 必要項目の選定 | ジョブカンへ移行する項目を厳選 |
| 移行できない項目の対応 | BPOによる補完 |
| テスト | 照合テストで不一致が生じた場合は原因を追及 |
| 追加開発 | ジョブカンの特性を補うツールを開発 |
| 並行稼働 | お客様のスケジュールに合わせて並行稼働を実施 |
成果
- 短期間かつ低コストでERPからSaaSへの移行を実現
- システム変更時間の短縮
- ペーパーレス化による業務効率化
- 人事給与業務の負担軽減
- コスト削減
導入のポイント
- 現状分析を徹底し、必要項目を厳選
- 移行できない項目はBPOで補完
- テストを十分に行い、不備を解消
- 追加開発でジョブカンの利便性を向上
- お客様のスケジュールに合わせた並行稼働
お客様の声
| 短期間で低コストでシステム移行を実現でき、大変満足しています。ジョブカンへの移行とフルアウトソーシングにより、人事給与業務の負担が軽減され、コスト削減にもつながりました。今後は、ペーパレス化をさらに進め、業務効率化を図っていきたいと考えています。 |
アウトソーシング先の選定基準
外資系企業が給与計算をアウトソーシングする際には、下記3つの選定基準を総合的に判断する必要があります。
多言語対応能力と国際的な経験
外資系企業にとって、多言語対応能力と国際的な経験は、アウトソーシング先を選定する際の重要な基準となります。
外資系企業は、本国とのコミュニケーションや国際的な取引において、多言語での対応が必要です。
ご質問やご相談など何でもお気軽にお問い合わせください。
外資系企業での給与計算には下記への対応が必要です。
- 英語での給与明細書や各種書類の作成
- 本社との英語でのコミュニケーション
- 国際的な会計基準への対応
- 外国人従業員向けの給与計算
- 多重課税リスクへの対応
給与計算や会計業務において、英語でのコミュニケーションやレポーティングは必須です。アウトソーシング先が英語対応が可能であり、国際的な経験に長けていなければ基本的な業務も遂行できません。
日本の労働法規と税務知識
アウトソーシング先は、日本の労働法規と税務知識に精通していることが重要です。
外資系企業でも、日本国内で活動を行うためには、日本の労働法規や税務制度に準拠する必要があります。
アウトソーサーには下記の対応が求められます。
- 日本の複雑な社会保険制度への対応
- 外国人雇用に関する法令への対応
- 日本の税法に基づいた給与計算
- 年末調整や社会保険手続きの代行
決算や給与計算において、日本の労働法規や税務知識を理解しているアウトソーシング先を選ぶことが重要です。最新の情報にアップデートしていることも重要でしょう。
カスタマイズ性と拡張性
アウトソーシング先の給与計算システムは、カスタマイズ性と拡張性を兼ね備えていることが望ましいです。
外資系企業は、事業の成長や変化に合わせてシステムを柔軟に適応させる必要があります。アウトソーシング先が提供するシステムが、カスタマイズ可能であり、将来的な拡張が容易であれば、ビジネスの成長に対応することができます。
外資系企業の給与計算システムでは下記への対応が求められます。
- 本社のシステムとの連携
- 独自の給与体系への対応
- 将来的な事業拡大に対応できるシステム
カスタマイズ性と拡張性を兼ね備えたシステムを提供しているアウトソーシング先を選ぶことが重要です。また、システムのセキュリティ対策も万全であることも必要です。
人事・給与システムの移行や給与アウトソーシングをご検討されている方のために、
COMIT HRのサービス概要と導入事例を解説しています。
導入時のポイント
外資系企業が給与計算アウトソーシングを導入する際には、下記の3つへ留意が必要です。
明確な契約内容とサービスレベルの設定
導入時には、明確な契約内容とサービスレベルの設定が不可欠です。契約内容とサービスレベルの明確化は、業務の円滑な遂行やトラブル回避につながります。
具体的には、次の契約内容やサービスレベルの設定が必要です。
- 本国の会計基準と日本の会計基準の違いを考慮した契約内容にする
- 外国人従業員の社会保険手続きに関する条項を設ける
- 英語でのコミュニケーションや資料作成に対応できるよう、サービスレベル目標に明記する
- 契約書に「本国の会計基準に基づいた給与計算もオプションとして提供する」という条項を設ける
- サービスレベル目標として「英語でのサポートは、平日9時から18時まで、1時間以内に対応する」と設定する
契約書には、業務範囲、納期、料金体系などを明記し、サービスレベルについては、業務の品質基準やサポート体制を具体的に定めることが重要です。
コミュニケーションと情報共有の重要性
コミュニケーション不足や情報の不足は、業務の円滑な進行を阻害する原因となります。定期的なミーティングや報告体制の整備を通じて、関係者間でのコミュニケーションを促進し、情報共有を確保しましょう。
コミュニケーションや情報共有に有効な対策には下記があります。
- タイムゾーンの違いを考慮したコミュニケーション方法の確立
- 英語と日本語の両方での情報共有
- 外国人従業員向けに給与計算に関する説明会の開催
継続的なパフォーマンスの評価と改善
給与計算アウトソーシングは導入後も、継続的なパフォーマンスの評価と改善が必要ですパフォーマンスの評価と改善によって、サービス品質の向上や効率化が図られます。
KPI設定の事例には、下記があります。
- 本国の会計基準に基づいた給与計算の誤り率（例：0.05%以下）
- 外国人従業員からの問い合わせ対応時間（例：90%以内に1時間以内に回答）
- 本国の会計基準との整合性に関する評価（例：アンケート調査による満足度90%以上）
また、評価方法として、定期的な進捗報告会（週次、月次）やアンケート調査、従業員へのインタビューなどを用います。
パフォーマンスの評価と改善に関するポイントを押さえることで、外資系企業におけるアウトソーシング導入を成功に導くことができるでしょう。
まとめ
給与計算アウトソーシングは、外資系企業にとって、日本市場での成功を導く戦略的な選択肢といえます。専門知識を持つパートナーと協力することで、課題を克服し、競争力を強化することができるでしょう。
