2027年問題とは?SAPのERPシステムを対策する完全ガイド

 公開日:2023年12月19日

SAP社のERP「SAP ERP 6.0」の保守サポート期限が2027年末までとなり、2027年問題が注目を集めています。

 

この記事では2027年問題の起源と背景から、対処法やクラウドへの移行などを解説します。情報システム担当者やクラウド移行を検討中の企業の方は、ぜひ参考にしてください。

2027年問題とは?

2027年問題は、SAP社が提供しているERP(Enterprise Resources Planning / 統合基幹業務システム)製品「SAP ERP 6.0」の保守サポート期間が2027年末までとされていることに起因する問題です。

 

サポート期間が終了すると、新しい機能の追加や修正プログラムの提供、システム品質の改善などのサポートを受けられなくなる懸念があり、企業にとって重要な課題となっています。

 

 2027年問題の起源と背景

「2027年問題」は、SAP社が保守サポート期限を2027年まで延長したことに由来します。元々「SAP ERP 6.0」のサポート期限は2025年末であり、その後2027年に延長されたことで「2027年問題」と呼ばれています。

 

この延長は、企業が対応する時間的余裕を持たせるために行われたものでした。対応方法の検討やシステムの移行は企業全体が関わる重大な課題であり、ユーザーが適切に対処する目的で期限を延長したとされています。

 

2025年問題とは?

2020年2月、SAP社は保守期限を2027年末まで延長する発表を行いました。元々、SAP ERPやSAP Business Suiteの保守期限は、2025年で終了する予定だったため、当初は「2025年問題」と呼ばれていました。

 

SAP ERPは業界のリーディングプロダクトであり、日本国内でも2,000社以上が導入しています。多くの企業がシステム更新を突きつけられた形となり、ビジネスのITインフラに関わる大きな課題となっています。

 

 SAPシステム保守期限の終了がビジネスに与える影響

「SAP ERP 6.0」の保守サポート期間が終了した場合、企業には以下の影響が出ると考えられています。

 

  • セキュリティリスク
  • システムの陳腐化
  • システム障害のリスク
  • 新機能の追加がされない
  • 修正プログラムの提供がされない
  • サポートが受けられなくなる

 

今後は、システム移行の需要も増えることが考えられますが、期限が近い場合は専門知識をもつSAPコンサルタントの不足も懸念されます。

 

SAP ERPを導入している企業は、早急に移行計画が必要です。

2027年問題の対応戦略

SAP社のERP製品「SAP ERP 6.0」や「SAP Business Suite」の標準サポートが2027年に終了する「2027年問題」への、対応策は以下の4つがあります。

 

  • S/4HANAへの移行
  • SAPの継続利用
  • 他のERPシステムへの移行
  • クラウドへの移行

 

S/4HANAへの移行

一つ目が、SAP社の提供する最新のERP「SAP S/4HANA」に移行する方法です。同じSAP製品のため、運用にある程度のノウハウを活かすことが可能です。

 

SAP S/4HANAは、高速な処理をおこなえるインメモリデータベースを採用しており、高速処理による業務効率化が特徴です。

 

移行方法には、GreenField(リビルド)とBrown Field(コンバージョン)の2つがあり、特徴と適用シーンが異なります。

GreenField(リビルド) SAP S/4HANAへ新しいシステムを構築する
費用や移行時間は大きくなる
Brown Field(コンバージョン) 既存のシステム要件を引き継ぐ
リビルドよりもコスト・時間を抑えられる

 

 SAPを継続利用のメリットとリスク

二つ目はSAP ERPの継続利用です。継続利用は追加のコストが発生しないため、コスト削減に注力したい企業にとっては選択肢のひとつでしょう。ただしサポート期限終了後にサポートを受けられない可能性があります。

 

特にERPシステムからの移行に関しては、データの破損や消失、不具合などの懸念がつきまといます。

 

企業はサポート終了のリスクとコスト削減のメリットのバランスを慎重に検討し、移行のタイミングを慎重に考える必要があるでしょう。

 

 他のERPシステムへの切り替え

三つ目はSAP以外のERPへの移行です。たとえば、現行のSAP社製品を導入し未使用の機能があり、業種特有のカスタマイズを繰り返している場合、他社製品への移行は、自社のニーズに適したシステムを導入できるチャンスでしょう。

 

自社の業種や企業規模に適したシステムを選択することで、運用コストを抑えることが可能になりますが、導入時には初期費用が発生することを認識しておく必要があります。

 

 クラウド移行

四つ目は、クラウドへの移行です。SAPからクラウドへの移行は、業務プロセスの大半を自動化できるため、業務効率性が高くスマートな業務環境の整備を促進します。

 

クラウド型のERPとしては、Microsoft社が手掛ける「Microsoft Dynamics 365」やOracle社が提供する「Oracle Cloud ERP」が、SAPからの乗り換え先として注目を集めています。

 

COMIT HRでは、短期間かつ低コストでERPからSaaSへの移行を実現し、クライアントの煩雑な勤怠業務を改善した実績があります。

 

ご質問やご相談など何でもお気軽にお問い合わせください。

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SAP ERPからS/4HANAへの移行について

SAP ERPからの乗り換え先として有力なのが「SAP S/4HANA」です。2027年をすぎた場合、新機能の追加やシステム品質の改善などのサポートを受けられなくなります。

 

「SAP S/4HANA」への移行は、サポート期限が切れる前に行う必要があります。「S/4HANA」への移行に焦点を当て、SAP ERPとの違いや、メリット・デメリットについて解説しています。

 

 S/4HANAの基本的な特徴と機能

「SAP S/4HANA」は、SAP 社から発売されている実用性の高いERPシステムです。

 

SAP S/4HANA の特徴は次のとおりです。

 

  • データベースが速い
  • 処理速度が向上している
  • 柔軟なデータ活用を実現しやすい
  • 作業がしやすい
  • 必要な情報に素早くアクセスできる

 

 

「データベースサービス」「分析処理」「アプリの開発」「データアクセス」「管理」「セキュリティ」

 

上記、6つのカテゴリに分けられた豊富な機能を備え、企業のビジネスプロセスを最適化し処理を高速化します。

 

 SAP ERPとS/4HANAの主な違い

SAP S/4HANAとSAP ERPの主な違いは、データ処理機能にあります。SAP ERPでは、各業務の機能別に画面を移動する必要がありました。

 

「SAP S/4HANA」では、ユーザーごとの処理画面のカスタマイズが可能なため、ユーザーごとのロール画面を設計して画面移動の工程が減らせます。

 

個別で管理が必要だった個別マスターを、一元管理できるBP(ビジネスパートナー)マスターが導入されたことも、大きな違いとして挙げられます。

 

 S/4HANAへの移行がもたらすメリット

「SAP S/4HANA」への移行によるメリットには次が挙げられます。

 

  • 高速処理
  • 作業のスピードアップ
  • 使いやすい画面
  • 情報への素早いアクセス
  • さまざまな情報の可視化
  • IoTや機械学習、ブロックチェーンなどへの対応
  • 膨大な経営情報のデータ分析
  • 処理プロセスの自動化
  • 同一プラットフォームでの分析・レポーティング
  • 業務処理機能の一元管理化

 

「SAP S/4HANA」を標準機能にあわせることで、最新の機械学習機能もすぐに利用できるため、属人化の解消にもつながります。

 

 S/4HANAへの移行がもたらすデメリット

一方で「SAP S/4HANA」への移行にはデメリットも存在します。

 

  • データベースはSAP HANAのみの使用に限定される
  • ユーザー部門や情報システム担当者への負担増
  • スムーズなデータ移行が困難
  • カスタマイズの制限
  • 作り上げてきたシステムの放棄

 

上記の場合、「SAP S/4HANA」へのデメリットと捉えるのではなく、システムのバージョンアップや乗り換えの際にかならず発生する事項です。

 

「SAP S/4HANA」への移行は、他のSAPシステムとの連携を維持しながら移行できる場合もあるためリスクは低く抑えられるでしょう。

SAP ERPからクラウドの移行 について

SAP ERPからクラウドへの移行に関しては、「SAP S/4HANA Cloud」が有力な選択肢となります。オンプレミスのERPシステムに、AIなどの最新技術を取り入れる際、不整合による問題やコストが増大する懸念があります。

 

クラウドへの移行は、アドオン開発部分との不整合による問題やメンテナンス、機能拡張のコストを解決する方法のひとつです。

 

SAP利用企業にとっては「SAP S/4HANA Cloud」が有力な選択肢となり、ERP未導入の中堅・中小企業にとっても、クラウド版ERPへの移行は魅力的な選択肢となるでしょう。

 

 クラウドへ移行するメリット

従来のERPからクラウドへ移行するメリットには下記があります。

 

スケーラビリティ

SAPのERPシステムでは、長期間の運用中にデータ要件やユーザー数が変化し、サーバやストレージの増強が必要になります。クラウド移行により、管理者は管理ポータルで数回のクリックでサーバやストレージを簡単に増強できます。

 

テスト環境

企業が、ERP導入時のカスタマイズをする前にはテスト環境が必要です。クラウドベンダーは、効率的で費用対効果の高いテスト環境を提供しています。

 

セキュリティとコンプライアンス

クラウドベンダーは高度なセキュリティ機能を提供しています。

 

オンプレミスのデータセンターを管理する場合、必要なセキュリティやコンプライアンス要件を満たすことが、IT部門の大きな負担になります。

 

ITインフラに関する各種法規制に準拠したクラウドを選択することで、IT部門の負担を軽減できるでしょう。

 

クラウドへ移行するプロセス

オンプレミスからクラウドへの移行プロセスは、下記4つのステップで構成されます。

 

  1. 設計
  2. 検証
  3. 移行
  4. 運用

 

設計

設計段階では、オンプレミスからクラウドへの移行計画を立てます。移行の目的や必要なリソース、移行後のシステムの構成図を詳細に検討します。

 

検証

実際の移行前に、システムがクラウド環境で適切に動作することを確認、検証します。

 

移行

実際のデータやアプリケーションをクラウド環境に移す作業を行います。

 

運用

クラウド環境でのシステム運用を開始し、必要に応じて調整や改善を行います。

 

設計や検証の段階で十分な準備を行わなければ、トラブルや追加コストが発生する可能性があります。特に序盤のステップであるクラウド移行への計画をしっかりと検討することが重要です。

SAPからジョブカンへの移行事例

COMIT HRによる「ジョブカン勤怠管理」の導入事例を紹介します。

 

クライアントは外資系自動車部品メーカーで、800名の従業員を擁していました。ビジネス環境の変化に伴い、従来のSAPシステムの継続利用が難しくなったことが背景にあります。

 

特に、SAPの複雑な設定が他の人事給与システムへの切り替えを阻んでおり、課題解決が困難でした。

 

移行の主な内容は「SAPからジョブカンへの人事、給与、ワークフロー、勤怠システムへの移行」でした。現実の人事運用状況とSAPの設定とのギャップをCOMIT HRの担当者が分析し、課題を明確にすることからスタートしました。

 

分析をする中で、必要な項目のみジョブカンへ移行し、移行できない項目はBPOで対応する代替案を提示し、不足する部分は、ツールを追加開発して利便性を向上させています。

 

結果、COMIT HRを利用したことで、短期間かつ低コストでERPからSaaSへの移行を達成しました。ジョブカンを活用することで、人事業務のペーパーレス化が推進されました。さらに、COMIT HRのフルアウトソーシングにより、煩雑な勤怠業務から従業員を解放し、業務効率の向上に貢献した点も大きなポイントです。

 

顧客概要 外資系自動車部品メーカー様
従業員数 800名
委託替えの背景 ビジネス環境や市場、組織規模などの変化により、今まで利用していたSAPを使い続けることが難しくなった
SAPは法改正の度に追加費用が発生する為、費用対効果が低かった
コスト削減のため、委託替えをする必要があった
課題 SAPの複雑な設定により、他の人事給与システムに変更できない
どのシステムが自社にフィットするのかわからない
委託先の勤怠システムが機能性・UIともに時代遅れなため運用に支障がある
勤怠管理は自社で運用していたため大きな負担
効果 “短期間”かつ“低コスト”でERPからSaaSへの移行を実現
仕様変更にかかる時間が大幅短縮
人事業務のペーパレス化を実現
移行内容 フルアウトソーシングにより、人事・給与・WF・勤怠システムを一元化
紙申請、源泉帳票の電子化
賞与計算の完全システム化

COMIT HRでは他にもSAP移行をサポートしています。詳しくは導入事例をご確認ください。

 

COMIT HRの導入事例はこちら

導入事例

 

 

2027年のIT人材不足問題

2027年のIT人材不足問題は、SAPの保守サポート期限終了の「2027年問題」と共に深刻な懸念事項です。経済産業省のDXレポートによると、2025年までにIT人材の不足は約43万人に達し、2030年には79万人に拡大すると予測されています。

 

SAPを利用しているユーザー企業は、2027年までにシステム移行を迫られており、期限に向けた準備が急務です。システム移行には、ITコンサルタントやエンジニアなどの専門人材が必要ですが、IT人材の供給不足が懸念されます。

 

IT人材の不足は技術革新の停滞や企業の変革への適応力低下に直結するため、業界全体に大きな影響を及ぼす懸念があります。

 

今後もIT人材の不足は深刻化すると予想されているため、企業はシステム移行の準備を早急に進めなくてはなりません。

 

今回紹介したとおり、従来のERPシステムからクラウドへの安全で効率的な移行を図る必要があります。移行の際には、企業独自のルールに基づいた最適なクラウドを検討する必要があり、経験豊かな人事コンサルタントがフルサポートを行うことが不可欠です。

 

 

SAPや他ERPシステムからの乗り換えを検討している場合は、ぜひCOMIT HRにご相談ください。

 

COMIT HRでは、多種多様な人事・労務業務に対応するクラウドBPOサービスを提供しており、安全かつ効率的な移行をサポートいたします。

 

参照:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」

 

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