SAPは使いにくいの?・メリット・デメリットと効果的徹底解説

 公開日:2024年1月29日

SAPは使いにくいの?

SAPとは?

SAPとは、ドイツに本社を置SAP社が開発したERP(Enterprise Resource Planning)製品の総称です。ERPは、販売管理、製造管理、会計管理などを一元的に管理し、企業資産である「ヒト・モノ・カネ・情報」の統合管理を可能にします。「統合型基幹システム」とも称されます。

SAPは、ただデータを連携させるだけではなく、異なる部門や業務間のデータを瞬時に統合し、リアルタイムで反映できるため、業務の効率化が図れます。業務連携の無駄を省き、効果的な業務プロセスの実現が可能です。

SAPが優れている点は、他のERPに比べても高い機能性にあります。具体的には、連携や統合の機能性が非常に優れており、企業内の膨大なデータをリアルタイムで管理できる点が大きな強みです。

SAPは、グローバルで信頼されるシステムとして知られています。世界的に普及し、国際的な会計基準(IFRS)への適合や法規制、コンプライアンス要件への対応といった実績を持っています。

今後の事業展開においても、SAPの利用は有利に働くことが期待されます。

システム移行事例

SAP製品の概要とその特徴

SAPは多岐にわたる製品ラインナップを展開し、企業の規模やニーズに応じた統合型基幹システムを提供しています。その中で重要な製品をいくつか紹介しましょう。

SAP ERP

SAP ERPは、大企業向けの統合型基幹システムです。リアルタイムデータ処理とシステム連携に特徴を持ちます。

SAP ERPは業界のリーディングプロダクトであり、日本国内でも2,000社以上が導入しています。

2027年にはサポート終了が予定されており、次世代製品への移行が進められています。SAP ERPのサポート終了は、多くの企業がシステム更新を突きつけられた形となり、ITインフラに関わる大きな課題です。

SAP Business One

SAP Business Oneは、中小企業向けのERPです。1ユーザーから利用が可能です。主要プロセスの合理化を図り、リアルタイム情報に基づく意思決定をサポートします。

SAP Business Oneは、企業の成長にあわせて拡張できるソフトウェアです。

  • 財務会計
  • 顧客管理
  • 販売管理

など主要プロセスの合理化やリアルタイム情報に基づいた意思決定により、収益性の高い成長を推進できるでしょう。

短期間かつ低コストでの導入が可能で、27か国の言語、世界42か国の税制や商習慣に対応しています。

SAP Business ByDesign

SAP Business ByDesignは中堅企業向けのクラウド型ERPです。

  • 会計財務管理
  • 顧客管理
  • 人材管理
  • プロジェクト管理
  • 調達・購買
  • サプライチェーン管理

などの機能をクラウド上で利用できます。

クラウド型のためソフトウェアのダウンロードが必要ありません。IT資産を持つことなく、リーズナブルな月額費用で主要なビジネス機能全般を統合管理できます。

SAP SuccessFactors

SAP SuccessFactorsの特徴は、すべての人事業務をクラウドで行える点です。

タレントマネジメントから給与までのプロセスをクラウド上で統合し、人事業務の効率化が可能です。

人事・給与管理はもちろん、目標・評価管理、後継者の育成などの業務プロセスを網羅します。

従来の人事システムとは異なり、経営者から従業員まで全員が利用できるため、シームレスな情報の集約を実現し、戦略的な人財マネジメントが可能です。

SAP S/4HANA

次世代製品としてのSAP S/4HANAは、インメモリデータベース構造を採用し、高いデータベース処理能力を備えています。リアルタイムデータ活用とシステム連携の機能が強化され、既存のSAP ECCからもスムーズに移行可能。

SAP S/4 HANAは、SAP社のインメモリーデータベース「SAP HANA」を標準プラットフォームとするERP製品です。

「SAP R/3」および「SAP ERP」の後継であり、第4世代のERPとして位置付けられています。

SAP S/4HANA Cloud

SAP S/4HANA Cloudは、クラウド版であり、大中小企業に適しています。クラウド型の特長として、アップデートの自動化やAIを活用した処理の自動化が挙げられます。

SAP S/4HANA Cloudは、従来の作り込みを排除し、四半期毎に更新されるバージョンアップを通じて、常に最新の状況にすることが可能としたSaaS型の製品です。

SaaSで提供されているアプリケーションであり、月額利用料を支払うことで迅速な導入が可能です。予め用意された機能群から、必要な機能と不要な機能をそれぞれオンオフにでき、短期間/低コストで導入することが可能なほか、四半期ごとのアップデートにより常に最新リリース環境が利用できることが特徴です。

SAP Ariba

SAP Aribaは、電子調達や契約管理などを提供するクラウド型のWebシステムです。企業間ネットワークを形成し、調達・購買のプロセスを電子化してDXを促進します。

SAP Aribaの特徴は次のとおりです。

 

  • 見積・発注・請求にかかるやり取りの時間短縮
  • 取引内容の履歴が電子的に保存されるため検索や参照が容易
  • 紙媒体によるやり取りが不要となりペーパーレスを促進

SAPの主要機能とビジネスへの応用

SAPは組織のビジネスプロセスを効率的に統合し、競争力を向上させるための豊富な機能を提供しています。

4つのモジュール

SAPの主要な機能は、モジュールと呼ばれる機能の集合に4つに分類されます。

モジュール 機能
財務会計 / FI(Financial Accounting)
  • 会計伝票の記帳
  • 帳簿残高の管理
  • 債権債務管理
  • 固定資産の管理
  • 財務諸表の作成
 管理会計 / CO(Controlling)
  • 費用と収益の収集
  • 費用・収益の分析
 販売管理 / SD(Sales and Distribution)
  • 製品の見積
  • 販売
  • サービスの提供までに関わる業務のサポート
 在庫購買管理 / MM(Material Management )
  • 品目計画・管理
  • 購買管理
  • 入出庫管理
  • 在庫管理
  • 請求書照合

財務会計のFIモジュールでは財務や管理会計など、お金に関する機能が提供されています。FIに対して、COモジュールは管理会計領域の業務をカバーするモジュールです。

FIは外部向けの報告書を作成し、COは内部向けの報告書作成を目的にしています。

MM モジュールは「在庫管理システム」「調達管理システム」に該当するモジュールです。SDモジュールは「販売管理システム」に該当し、主にメーカー側の企業が利用します。

SAP導入のメリット

SAP導入には下記のメリットが挙げられます。

プロセスの標準化と自動化

SAPを活用することで、企業内のビジネスプロセスが標準化され、従業員は一貫性のある作業手順に基づいて業務を遂行できます。

ソフトウェアによる作業の自動化もされ、業務効率化を最適化し、時間と人的コストの削減が可能です。

 

SAP を導入しただけで業務効率化が実現できるわけではありません. 現場における業務プロセスを、 SAPにあわせて運用する必要があります。

統合されたビジネスプロセス

SAPによるリアルタイムでのデータ抽出と統合されたビジネスプロセスは、迅速な経営判断を可能にします。

経営者は必要なデータをダッシュボード上で瞬時に確認できるため、情報を基に戦略的な意思決定をスピーディーに行うことが可能です。

意思決定の速さは企業の競争力向上につながり、ビジネスチャンスの損失を最小限に抑えるでしょう。

グローバルなビジネスのサポート

SAPを利用することで、企業は国際的な展開に柔軟に対応ができます。世界中で1万2,000社がSAPを導入しており、日本国内でも2,000社程度が導入しています。

各国の法制度や商習慣に対応し、グローバルにビジネスを展開する企業の課題を解決することが魅力です。

大企業だけではなく中小企業でもSAPが導入されており、さまざまな業種や業態で利用されています。

SAP導入のデメリット

SAP導入には下記のデメリットが挙げられます。

導入と維持費用が高め

SAPのデメリットは、巨額な導入費と管理コストです。

 

  • ライセンス料
  • システム構築料
  • 追加開発費

 

などが初期費用に含まれます。

オンプレミスでSAPを導入することで高いセキュリティ環境を構築できますが、数千万から数億円の開発費用が必要です。ITインフラの保守や運用管理にもリソースを投じなくてはならないため、管理コストが高額になる可能性があります。

初期費用がかさむ場合、SAPを使いこなし業務効率や競争力を高めることで早期のコスト回収が可能です。標準機能を最大限に利用することで追加開発費用を最小限に抑えることができます。

導入プロセスが煩雑

SAPの導入時には、SAP製品の標準機能を理解したうえで企業独自の業務プロセスとSAP製品を調整する必要があります。追加の開発や調整作業が煩雑で時間を要してしまいます。

SAPの導入は基本的に

  1. 導入目的・自社課題の整理
  2. ベンダー・業者選定
  3. 要件定義・スケジュール調整
  4. プログラム設計・開発
  5. 初期設定・運用テスト
  6. 社内教育・効果測定

のプロセスに沿って展開します。

導入を検討する際には、

「自社が改善したいことは何か?」

「何故SAPを導入するのか?」

など目的を具体化することが必要です。

導入目的を明確化したうえで機能要件と非機能要件を定義します。導入目的や自社課題が明確になっていない状況では、スムーズな導入が困難です。

 

ご質問やご相談など何でもお気軽にお問い合わせください。

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カスタマイズの困難さ

SAP製品と業務プロセスを調整するためには、SAPのカスタマイズが必要不可欠です。SAPでは業務ごとの詳細な設定を任意に行うことをカスタマイズといいます。

 

たとえば、特定の業務フローにあわせて画面レイアウトを変更したり、フィールドを追加したりすることがカスタマイズです。

 

カスタマイズを行うためには、SAPの標準機能を理解し、専門的な知識や技術が求められます。

 

SAPでは、機能や設定が複雑なあまり、カスタマイズを使いこなすまで苦労するデメリットがあります。

 

カスタマイズに類似した機能にアドオンがあります。カスタマイズは「変更」のために行われ、アドオンは「新機能の追加」のために行われます。

 

アドオンにはプログラムの知識も必要とされるため、カスタマイズとアドオンの認識の違いにも注意が必要です。

運用変更への対応

SAPを導入した後に業務プロセスの変更があった場合、業務運用への柔軟な対応が困難です。SAPの機能や効果を十分に理解せずに導入した場合は、期待した効率化を実現できません。従来の業務にあった機能が不足する可能性があります。

 

SAPを導入したものの、効果が出ているか不明瞭に感じてしまうでしょう。

 

SAPの導入に際してベンダーへ依存し過ぎる姿勢も、導入結果の不適合につながりかねません。特にSAPは専門性が高く対応できるベンダーが不足気味です。対応できるベンダーが他にいないため、価格交渉など交渉力が低下する恐れがあります。

 

 

 

SAPを導入する前に明確な目標を設定し、適切な指標を用いて効果を評価することが重要です。「残業時間の削減」や「作業効率の向上」などの具体的な数値が設定されないままの場合、導入効果を評価することが難しくなるでしょう。

依存度の高さ

SAPを導入した場合、企業がSAPに対して大きく依存する状況に陥る可能性があります。業務プロセスやデータがSAPに依存することで、他のシステムへの移行が難しく、長期的な依存が生まれる可能性があります。

 

たとえば、SAPに組み込まれた業務プロセスやデータが他のシステムとの連携が困難となり、移行が難しくなります。企業はSAPからの離脱が難しく、長期的な依存関係が生じるリスクが存在します。

 

SAPシステムの導入は将来に大きな影響を及ぼす重要な意思決定です。

SAP導入を検討する際には、企業は依存リスク、ビジネスへの影響分析、長期的なビジョンと戦略の策定を理解して戦略を策定しましょう。

 

 

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導入事例

 

操作を慣れるまで時間がかかる

SAPの導入には操作に慣れるまでの時間が必要です。SAPは多岐にわたる機能を備えており、複雑性から従業員は新たな操作方法を学び、慣れる必要があります。

SAPは、独自の仕様のため操作に慣れるまでには時間がかかります。SAP特有の言い回しや操作手順に慣れていない場合、効率的にシステムを扱うことが難しいでしょう。

システム全体の操作だけでなく、各部門が円滑に運用するための理解も必要です。従業員全体が理解できるような作業マニュアルの整備が求められ、容易に操作できる体制づくりが重要です。

組織がSAP導入に臨む際には、操作の慣れにかかる時間を考慮し、教育期間を計画することが必要です。

専門人材の確保

SAPを適切に導入・運用するためには、専門的な知識を持った人材が必要です。

SAPは、ABAPと呼ばれる独自のプログラミング言語で構築されており、ドキュメントは英語で書かれています。設定や操作を自由に行える人材を確保することが難しいとされています。

自社にSAPの知識を持った人材がいない場合、SAPコンサルタントや外部の人材、サービスに委託する必要があります。

現在、SAPコンサルタントは多くの企業で求められるうえに人材供給が追いついていません。需要過多の状態が顕著です。

2027年を目処にSAPが新バージョンへ切り替わることもあり、SAPコンサルタント不足が一層深刻化することが予測されます。

SAPの複雑性に対応できる専門家が不足している場合、トラブルの発生や最適な利用が難しくなるため、注意が必要です。

2027年問題

SAP ERP 6.0の保守サポート期限が2027年末で終了するため、新しい機能の提供や修正プログラムの受け取りができなくなります。

企業は、システムの品質向上やセキュリティの向上に関するサポートを受けられなくなります。ビジネス環境に適応できなくなり、業務遂行に支障をきたす可能性があります。

SAPは元々、2015年にサポート終了する予定でしたが2020年まで延長され、最終的に2027年までのサポート提供となりました。

多くの企業はサポート期限終了の問題に対応しなければならなくなりました。2027年問題は日本国内でも大きな課題です。

企業のITインフラにおいて大きな課題が生じるため、迅速な対応が求められています。

SAPの導入・運用の課題解決

SAPの導入、および運用の課題解決には下記が挙げられます。

適切な計画とリソースの確保

SAPの導入と運用において、計画とリソースの適切な確保は重要です。

適切で具体的な計画がない場合、運用段階での混乱や遅延が生じてプロジェクトの進行が脅かされるでしょう。明確な予算とスケジュールを設定し、適切な人材を配置することで、予期せぬ課題にも適切に対応できます。

計画の実行中には、リソースの変動に対応できる柔軟性も欠かせません。

専門知識の確保

SAPの運用には高度な専門知識を持つ人材が求められます。専門人材が不足した場合、システムの最適な運用が難しくなるでしょう。

プロジェクトメンバーのなかにはSAPの専門家を配置しましょう。トレーニングを通じて

メンバー全体がプロジェクトにおいて確かなスキルを有することが求められます。

ユーザートレーニングとサポート

ユーザートレーニングとサポートはSAPのスムーズな運用に欠かせません。ユーザートレーニングは、実務において効果的に活用するスキルを身につける機会です。

ユーザーはシステムを最大限に活かし、業務プロセスを効率化することが可能です。

段階的な導入

大規模な企業では一気にシステムを変更することは困難です。運用計画を策定し、徐々にSAPの導入を進めましょう。

SAPを導入する際には、一度にすべてを導入するのではなく、段階的な導入がおすすめです。段階的な導入により、問題の早期発見や修正が可能となります。

プロセスの最適化

SAPの導入・運用において、プロセスの最適化は重要な課題解決手段です。業務プロセスの標準化により、全体的な業務効率向上が期待できます。

業務プロセスの見直しを行い、SAPの機能に企業のプロセスを調整して最適化します。システムの有効活用が実現されることで、業務の効率向上につながります。

継続的な評価と改善

SAPの長期的な成功には、定期的な評価と改善が必要です。業務環境の変化に素早く対応することで、システムを最適な状態に保ちます。

社内でのフィードバックを活用して定期的な評価を行いましょう。SAPの導入が長期的に成功を収めるためには、必要に応じてシステムやプロセスの改善を実施することが重要です。

ユーザーフィードバックの活用

ユーザーからの要望や不満を積極的に収集しましょう。現行の課題やニーズを把握することで、フィードバックに基づいた改善策を迅速に実施できます。

ユーザーの声を具体的な事例として取り入れて活用してください。システムやトレーニングプログラムを改善することで、ユーザー満足度が向上します。

たとえば、特定の機能への不満から生じた作業の遅延を解消する改善が、全体の業務効率向上につながることもあります。

 

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